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「致します」と「いたします」の違いは?語源から使い分け方をマスターしよう

ビジネスパーソンであれば普段何気なくメールに書いている「いたします」という言葉、あなたはひらがなと漢字、どちらで表現しますか?実はひらがな表記の「いたします」と漢字表記の「致します」にはそれぞれ意味があったのです。

この記事ではビジネスパーソンなら知らないと恥ずかしい、「致します」と「いたします」の違いについて解説していきます。ケース別にどちらの”いたします”が適しているのか事例をあげながら解説するので参考にしてください。

目次

「致します」と「いたします」の違いは?

さっそく「致します」と「いたします」の違いを説明すると、「動詞」か「補助動詞」という違いがあります。もっとわかりやすく言うのであればひらがな表記の「いたします」の方がより”丁寧”になります。下の項でそれぞれの表記の語源や意味、例文を解説していきます。

「致します」の意味・語源

まずは漢字表記の「致します」について解説しましょう。致しますの語源は動詞の「致す」(至す)からきています。この「致します」は広辞苑にて以下のように定義されています。

【致す】
①至らせる、及ぼす
②ささげつくす
③仕向ける
④結果としてもたらす引用:岩波書店『広辞苑』

上記の表にある「致す」の意味を見てみると、至らせる、仕向ける、もたらす等、敬語に該当する表現が全くないことがわかりますよね。致しますという表記は「致す」+「ます」で構成されています。「ます」は丁寧語ですのでかろうじて敬語の体裁を保っています。

これまで「よろしくお願い致します」と漢字表記で「いたします」を記述していた方は正しい意味で使えてはいなかったのです。

「致します」の例文

では漢字表記の「致します」はどういった場面で使うのでしょうか?今すぐにビジネスメールで使える「致します」の使用例をご紹介します。

・私が致します

・恐縮ですが、私には致しかねます

・手順〇〇に致します

・大変失礼なことを致しました

・不徳の致すところ

こちらは「する」という意味ですね。行動や不可能、選択、謝罪など様々な意味に分岐します。

・私と致しましては、〇〇

「私としては」を敬語表現にしたいときに漢字表記の”致します”を利用し、「私と致しましては」とすることができます。

「いたします」の意味・語源

ひらがな表記の「いたします」は「する」の謙譲語「いたす」と丁寧語表現の「ます」から構成される熟語で、「致します」よりも強い敬語を表現できます。ビジネスの場では毎日使うと言っても過言ではない重要な表現になっています。

「いたします」の例文

・よろしくお願いいたします

・ご迷惑をおかけいたします

・参加いたします

・失礼いたします

・お送りいたします

・承知いたしました

「致します」と「いたします」はどちらが正しい?

漢字表記の「致します」とひらがな表記の「いたします」は場面によって使い分ける必要があります。

「〜に至らせる、する」といった意味で使うのであれば漢字表記の「致します」が正しいです。

一方、語尾につけて敬語として使うのであれば、ひらがなの「いたします」が正しいです。

「致します」と「いたします」の使い分け

先述の通り、漢字表記の「致します」は「〜する、仕向ける、至らせる」という意味を持っており、敬意表現ではありません。

「私が致します」や「不徳の致すところ」といったフレーズでは「〜する、仕向ける、至らせる」という意味になりますので、この場合は漢字表記の「致します」を使います。

一方で補助動詞として使うのであればひらがな表記の「いたします」がおすすめです。

敬語の使い分けは、相手に対する敬意を示す上で非常に重要です。「致します」と「いたします」の混在が見られる場合、文脈に応じて最適な選択をすることが求められます。例えば、上司や外部の重要なクライアントには「致します」を使用し、同僚や内部の報告には「いたします」を選ぶことが一般的です。この微妙なニュアンスの違いが、コミュニケーションの質を左右することもあります。

より丁寧なのは「いたします」

ひらがな表記の「いたします」は補助動詞の役割を果たし、動詞を丁寧な表現にすることができます。また公文書では、特に正確さと格式を重んじるため、「致します」の使用が推奨されることが多いです。しかし、公用文では書き手の地位や文書の公式性を考慮して、「いたします」が使われる場合もあります。どちらの表現も、書かれる文書の種類や、そこでの役割によって適切に使い分ける必要があります。

公文書における補助動詞はひらがなで表記する決まりがあるので、「お願いいたします」や「失礼いたします」など、必ずひらがなで「いたします」と記述しましょう。

「致します・いたします」の注意点

ここからは「致します」と「いたします」を使う際の注意点をご紹介します。これらの注意点を知らずに使ってしまうと恥ずかしい思いをしてしまうので、最後までチェックすることをおすすめします。

ビジネス文書は「いたします」を使う

ビジネス文書において、「致します」と「いたします」は丁寧な表現としてよく使われます。しかし、「致します」はよりフォーマルな状況で好まれる傾向にあり、「いたします」はやや柔らかい印象を与えるため、日常的なビジネスコミュニケーションに用いられることが多いです。どちらの言葉も同じ意味を持ちますが、受け手の立場や文書の正式度によって使い分けることが重要です。

PCやスマホで「おねがいいたします」と入力すると「お願い致します」と変換されてしまいますよね。しかしビジネス文書のような公文書には、「お願いいたします」とひらがなの「いたします」を使いましょう。

「お願いいたします」は容認されている二重敬語

普段何気なく使っている「お願いいたします」というフレーズは実は二重敬語です。「お〜いたし」の部分が二重敬語にあたり、本来は間違った日本語です。

しかし、すでに慣用的に使われているフレーズなので、使っても問題ないと捉えられています。

何回も繰り返して使わない

動詞を丁寧な敬意表現に変える「いたします」は、何回も繰り返して使ってはいけません。伝えることをシンプルにまとめることで、相手の手を煩わせかず、スムーズなやりとりができます。冗長な表現は避けた方がベターです。

どちらが正しい?

ここからは「いたします」に関連したおすすめの表現やクイズを紹介します。

「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の違いは?

ビジネスシーンで相手に依頼をする際、あなたはどのような言葉を相手にかけますか?

「お願いいたします」以外にも、「お願い申し上げます」というフレーズがあります。

この2つのフレーズの違いを見てみましょう。

お願い申し上げますは「願いを言う」

「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の違いは、「お願いをする」か「お願いを言う」かの違いがあります。

また2つの表現の意味合いには程度にほとんど差はありませんが、「お願い申し上げます」の方が謙虚で、やや丁寧な印象を相手に与えることができます。

ただ「お願いいたします」も「お願い申し上げます」も、区別して使い分けている人はそうそういないので、特に気にする必要はないでしょう。

「よろしくおねがいいたします」どれが正解?

ここで1つあなたにクイズを出しますので、どの表現が正解なのか、考えてみましょう。

あなたは「株式会社ABC」という企業に勤める会社員で、取引先にとある依頼メールを出さなくてはいけません。「よろしくおねがいいたします」と表現するには下記の4つのうち、どれが適切でしょうか?

①よろしくお願い致します

②よろしくお願いいたします

③宜しくお願い致します

④宜しくお願いいたします

正解は、

②の「よろしくお願いいたします」です。

①から④まで、どれもよく見る表現ですが、一体何が間違っているのでしょうか?詳しく解説していきます。

補助動詞はひらがなで書く

先ほどから何度も申し上げているように、補助動詞として使う「いたします」はひらがなで書かなくてはいけません。「お願いいたします」は動詞「願う」の後に付与する補助動詞の役割を持っているので、漢字表記の「致します」は不適切となります。よってこの時点で①と③の選択肢が消えます。

宜しくは「よろしく」とは読まない

普段何気なく「宜しく」と書いていたあなたは驚くかもしれませんが、実は常用漢字表に載っている「宜」という漢字は、音読みの「ギ」しかありません。「宜しく(よろしく)」という読み方は当て字だったのです。常用漢字表に載っていない漢字の読み方は公文書では使用できませんので、意外なことに④の選択肢も消えてしまい、②が正解となるのです。

間違えやすいビジネス文章

「致します」と「いたします」のように、実は使い分ける必要がある語句や、何気なく使っているけど実はNGだったというビジネス文章を紹介します。意外な発見が次々ありますので、ぜひご覧ください。

目上の人には「お疲れ様です」

あなたは退勤時やイベント終了後などに「お疲れ様です」と言いますか?「ご苦労様です」と言いますか?

目上の人向けに言うのであれば、「お疲れ様です」が適切なのです。

「ご苦労様」には、「苦労を労う」という意味があるので、目上の人に向けて発する言葉としては失礼な言葉に当たるのです。

もちろん、自分より立場の低い部下に対して「ご苦労様」と使うのは問題ありません。

話し言葉の「御社」書き言葉の「貴社」

相手の会社を指す丁寧な言葉として、「御社」と「貴社」があります。これらは口頭と文書で使い分ける必要があります。というのも「貴社(きしゃ)」という語句には、同音異義語が多数あります。帰社、記者、汽車など、話し言葉として使うには紛らわしいですよね。ですので口頭では「御社」を、文章では「貴社」を使いましょう。

「お身体ご自愛ください」

ビジネスメールの定型句である「ご自愛ください」という表現ですが、実は「自愛」という言葉に「体を大事にする」という意味が含まれています。なので前にお身体と付けるのは意味が重複してしまうことになります。「くれぐれも無理なさらぬようご自愛ください」など、重複のないよう注意しましょう。

目上の人に「了解」はNG

相手の発言に対するリアクションとして「了解しました」、「承知しました」、「かしこまりました」の3つの表現が挙げられます。実は目上の人には「承知しました」「かしこまりました」を使わなければいけません。「了解(しました)」という言葉は自分より立場の低い人へ向けて使う表現なので意識して使い分けましょう。

お世話になっておりますは面識のある人へ

ビジネスメールの定型句である「お世話になっております」というフレーズは、すでに面識のある(やりとりをしたことがある)人にしか使えません。面識のない人へは「突然のご連絡失礼いたします」を使いましょう。これからやり取りが見込まれる方には「お世話になります」というフレーズを使うのも良いでしょう。

目上の人に「参考になりました」はNG

相手から何か情報を頂いたときに発する言葉の1つです。「参考」には自分の考えを決める際の足しにするという意味があるため、目上の人に使うのは失礼にあたります。目上の人へ使うのであれば「勉強になりました」と言い換えましょう。

二重敬語に注意

「拝見させていただく」や「ご覧になられました」といった二重敬語には注意が必要です。といってもどのように注意すればよいかわからないというのが日本語の難しいところです。多くは次の2パターンにわかれます。

①「謙譲語+いただく」

②「お(ご)〜れる(られる)」

①のパターンは、「拝見させていただく」のように、謙譲語の拝見と、いただく(謙譲語)という構成から成り立っている言葉は謙譲語が二重になっています。ここでは「拝見しました」が適切です。

②のパターンは、「ご覧になられる」のように、ご(お)から始まって、れる(られる)で終わる表現です。尊敬語が2つ重なっています。ここでは「ご覧になる」が適切です。

「ご承知おきください」は命令形

相手に情報を渡して、それを把握しておいてほしい。そんな時に「ご承知おきください」というフレーズを使うかもしれませんが、実は「知っておいてください」という命令形の意にあたります。これでは目上の人に向けて使えないので、「お含みおきください」と言い換えましょう。

取り急ぎは失礼にあたる可能性がある

詳細なことは伝えられないけど、とりあえずこれだけは伝えておきたい。そう言った場合に使うフレーズとして「取り急ぎ」がありますが、こちらは省略の意ですので、目上の人や客先に使うのは失礼にあたります。「まずは、〇〇申し上げます」など、忙しい場合でも丁寧な表現を心がけましょう。

履歴書と公用文での表現の違い

履歴書や職務経歴書などの個人的な書類においては、「致します」を用いることでより丁寧な印象を与えることができます。一方、公用文では書式や用語が厳格に定められているため、「致します」または「いたします」の使い方を規定に従って選ぶことが必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか?大前提として漢字表記の「致します」と、ひらがな表記の「いたします」は全くの別物であると認識する必要があります。「致します」は動作を仕向けたり、もたらすという意味を持つ動詞「致す」+丁寧語「ます」という構成の語句です。

一方で「いたします」は、「する」の丁寧語「いたす」+丁寧語の「ます」という構成になっています。補助動詞としての役割を持つため、本来のいたすという意味を弱めて、前に付与した動詞を補助する表現となっています。もしも丁寧な敬語表現をしたいのであれば、ひらがなの「いたします」とするのが適切です。

ビジネスの場ではあらゆるケースで「致します」という表現の誤用がされています。この記事を読んだからには、公文書や、メールなど、かしこまった場面では、ひらがなの「いたします」を使うよう意識しましょう。

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